詳細資料_県民ボランタリー活動実態調査
県民ボランタリー活動を行っている団体・グループの実態や課題、ニーズ等を把握するとともに、兵庫のボランタリー活動等の取組を評価し、
今後の支援方策を検討するための基礎資料とすることにより、県民ボランタリー活動を推進する。
県内NPO法人及び市区町社会福祉協議会への登録団体から無作為抽出した5,000団体を対象として、従来のアンケート用紙を郵送する方法から、
オンラインフォームによる調査に変更して調査(令和6年8月実施)。
任意団体:696団体、NPO:193団体、その他の法人:41団体
調査内容の検討や結果の分析を行うため、NPO関係者、学識経験者等で構成する調査委員会を設置した。
委員長:宮垣 元 慶應義塾大学総合政策学部 教授
委 員:中山 光子 認定NPO法人 宝塚NPOセンター 理事長
委 員:冬頭 佐智子 生活協同組合コープこうべ 地域活動推進部 統括部長
委 員:長谷部 治 社会福祉法人神戸市社会福祉協議会 地域支援部 担当課長(福祉支援・活動推進)
① 活動分野と方法の多様化
活動分野で最も多いのが「福祉の増進」であるが、前回調査より割合が減少(前回63.9%→今回54.0%)。一方、「子どもの健全育成」「まちづくりの
推進」は増加傾向となり、全体的に活動分野の多様化が見られる(図表2-1(※1))。※1報告書中の参照図表を記載(以下同様)。
活動方法では、「親睦・交流などの場を提供する」(55.2%)が最も多く、次いで「イベントやシンポジウム等を企画・開催する」(32.3%)、「サービ
スを提供したり、人材を派遣する」(31.8%)となっている(図表2-6)。
② 活動の頻度 ~9割の団体が活発に活動~
現在の活動が「活発」だとする団体は9割(「どちらかというと活発(51.5%)」「とても活発(39.4%)」の合計)にのぼり、県内のボランタリー活動全体
では活発だと考える団体が大多数となっている(図表2-10)。
1年間の活動回数は、前回調査と比べて大きな違いはなく、NPO法人の方が任意団体より活動回数が多くなる(図表4-2)。活動場所は、任意団体が
「公民館や福祉センターなどの公共施設」の利用が多く、NPO法人では「専用の事務所・事務スペース」が最も多い(図表4-9)。
① 活動者のすがた ~担い手は高齢化から多様化へ~
団体の活動者数は、「1-20人」が約7割と最も多く、「ほとんどが女性」の団体が約5割(51.4%)となっている(図表3-1、3-14)。
活動の中心となっている年齢層は「65歳以上、74歳以下」(43.0%)が最も多く、高齢層への偏りがみられるものの、前回調査と比べると、50歳以下の
各層でそれぞれ増加傾向が見られる。なお、法人格別で見ると、NPO法人では年齢層が若くなっている。(図表3-18~19)。
所属メンバーの職業では、4分の1程度の活動者が仕事や学業を行いながら参加している(図表3-21)。活動のきっかけは、主に「友人・知人・家族・
親族からの紹介」(53.2%)、「前からいる活動者の紹介」(51.1%)と総じて「口コミ」による。一方で、ホームページ・ブログ等の情報やSNS上の
投稿による効果も見られる(図表3-27)。
② 参加者のすがた ~口コミに頼る参加者が多い~
ボランタリーな活動には、担い手だけでなく、その活動の対象となる、サービス・支援を受ける方、イベント等への参加者等も広くその一員と言え、
活動への参加者数は、「1-20人」(29.7%)が最も多い。
参加のきっかけは、活動のきっかけと同様に「口コミ」が主な参加経路となっている(図表4-21)。
① 財政状況 ~支出は微増傾向、法人格により収入の規模と構成に違い~
令和5年度の支出総額は「10万円未満」(40.6%)、「10万円以上、100万円未満」(40.0%)がそれぞれ4割を占める。前回調査と比べると10万円以上の
各項目が増加し、支出の微増傾向が見られ、活動規模の拡大が推察される(図表5-1)。
収入内訳では、「会費・入会金」がある団体は6割台半ば(65.5%)で、そのうち概ね「会費・入会金」で運営する団体(収入に占める割合が、約8割
以上)は、全体の約1割である(図表5-12)。「ひょうごボランタリープラザからの助成金」が前回調査から減少し、「民間団体からの助成金」に増加が
見られる(図表5-11)。
また、法人格の違いが大きく「事業収入(受託事業・自主事業)」「民間団体からの助成金」「寄附金」などはNPO法人で高く、「ひょうごボランタリー
プラザからの助成金」や「行政・社会福祉協議会からの助成金」は任意団体で高い(図表5-13)。
② 運営の様子 ~対外的な情報発信の高まり。組織内は雰囲気良好~
団体運営で使用している事務書類等については、約9割の団体が「活動者や利用者の名簿」(89.1%)と「収支報告書、活動計算書」(86.7%)を保有して
おり、次いで「明文化された規約・会則」(71.3%)、「事業計画書」(60.3%)などとなっている。これらは前回調査より高くなっており、組織として必要な
ものの整備状況は高まり、この点での組織化が進んでいると見られる。また、「ホームページ・ブログ」(27.3%)、「団体の公式SNS」(25.5%)、
「団体の基本情報の公開」(36.9%)、「会報・ニュースレター」(22.4%)など、情報発信の各項目に増加が見られる(図表5-28)。
日頃の雰囲気は、「会議は普段、和気あいあいとした様子で進行している」(71.9%)が最も多い(図表6-5)。組織力向上のために学びたいスキルと
しては、「人材確保・人材育成」(42.5%)がもっとも高い(図表6-2)。
③ 団体の代表者 ~高齢層中心だが変化の兆しも。約半数が世代交代~
代表者の年齢は、半数以上が65歳以上(59.8%)。代表者の就任期間は、「10年以上」(28.0%)が最も多く、次いで「1年以上、3年未満」(22.8%)と
続く。また、代表者の代数(現在、何代目の代表者か)では、「1代目」(41.1%)が最も多く、次いで「5代目以上」(16.8%)、「2代目」(15.9%)と
続き、世代交代を経験している団体が約半数となっている(図表11-1~3)。
① 連携・協働の実態 ~6割が連携・協働し増加~
他の団体と連携・協働している団体は約6割で前回調査から増加傾向(前回55.9%→今回61.8%)が見られる(図表8-1)。連携・協働先の数は、
「10箇所以上」が3割(30.4%)と最も多く、前回調査より増加が見られる(図表8-13)。
協働の相手先としては、「地域を基盤とする団体」の中では「自治会」(44.0%)、「地域を基盤とする団体以外のボランタリー団体」では
「法人格のないボランタリー活動団体(以下、任意団体)」(67.5%)、「事業所等」では「福祉施設」(58.9%)、「学校等」では「小学校」(60.7%)
がそれぞれ多くなる。法人格別では、任意団体は「任意団体」同士で、NPO法人は「NPO法人」や「一般・公益法人」との連携・協働が多い。
地縁的な関係による近いつながりと、事業などによる広域的なつながりとの棲み分けが見られる(図表8-6~8)。
② 効果や意義 ~内容充実の一方、不要と考える団体も~
相手先がいずれの主体でも、「行事や事業の内容が充実した」との効果が最も多く、強化したい団体は「地域団体」(32.9%)、「ボランタリー団体」
(16.7%)、「学校等」(15.4%)の順で多くなる(図表8-20、8-22、8-24、8-26)。
一方、連携・協働に関して「特に必要と思わない」とする団体も4分の1程度(26.2%)見られる(図表8-27)。
③ 行政等との協働 ~行政等とのつながりは多いが、団体側の負担軽減が必要~
行政・社会福祉協議会とのつながりは、「日常的なつながりがある」(50.1%)が最も多く、次いで「呼びかけがあれば協力する程度の関係である」
(34.1%)となり、併せて8割を超えている。一方で、「ほとんどつながりがない」とする団体が増加している(前回10.7%→今回15.8%)(図表8-36)。
「日常的なつながりがある」と回答した466団体の具体的な内容は「助成金・補助金を受けている」(67.8%)が最も多く、次いで「情報やアドバイ
スを受けている」(47.9%)、「定期的に情報交換をしている」(36.9%)、「活動の場の提供を受けている」(33.3%)と続き、“資金”や“情報”、“場所”
のつながりがあることがわかる(図表8-40)。
今後の要望では、「各種申請や事業を実施するまでの手続きの簡素化してほしい」(前回30.7%→今回36.0%)や「書類作成など団体側の事務的負担
を少なくしてほしい」(前回25.7%→今回28.6%)などに前回調査からの増加も見られ、団体側の事務負担の軽減を求める声が大きくなっている(図表8-42)。
活動団体がこれまでに行ったことのある災害時の支援活動は、「義援金の寄附、募金活動」(24.2%)が最も多い。また、今後の意向では「支援の呼びかけや、
関連情報の発信・共有」(23.7%)が最も多く、「義援金の寄附、募金活動」(16.8%)、「避難所の支援」(15.4%)と続き、資金的な支援以上に、実際の
支援活動につながる活動への志向が見られる。一方で「救援・復興支援活動を行ったことはない/活動をする意向はない」団体も約2割を占める結果となって
いる(実績21.2%・今後の意向21.9%)(図表9-1)。
前回調査(令和元年度)から今回調査の間には「コロナ禍」があり、対面接触や行動の制限などボランタリーな活動への影響も考えられるなか、5年前との
比較を見ると、「活動の回数」や「活動の種類」、「参加者数」、「支出総額」、「収入」ではいずれも「増加」を感じる団体が多く、コロナ前(5年前)の
水準に戻しつつあることが見られる。一方、「活動者数」だけは、コロナ前からの減少が見られる(図表2-15、2-20、3-9、4-16、5-6、5-14)。
【現在(調査時点)と5年前(コロナ前)を比べた変化】
・活動の回数 「増加」:35.0% > 「減少」:21.3%
・活動の種類 「増加」:29.2% > 「減少」:11.3%
・活動者数 「増加」:24.1% > 「減少」:27.1%
・参加者数 「増加」:32.6% > 「減少」:29.4%
・支出総額 「増加」:31.8% > 「減少」:20.4%
・収入(※2)「増加」:88.0% > 「減少」:65.9%
※2 受託事業収入(増35.6%・減17.2%)、自主事業収入(増27.9%・減25.7%)、寄附金(増24.5%・減23.0%)を含む。
① 9割が維持・拡充意向、しかし担い手と資金面の課題が大きい
現在の活動における問題点・課題については、「活動者の数が足りない」(50.9%)が最も多く、次いで「世代交代が遅れている」(44.0%)、「活動に必要
な資金が不足している」(27.6%)となり、前回調査に比べ「活動場所の確保が難しい」も増加していることから、担い手や資金、場所などのリソースに課題
が見られる(図表7-1)。
今後の活動の方向性では「現状を維持する」(63.3%)が最も多く、「拡大、充実させる」(30.6%)とあわせると9割以上を占める。前回調査と比べ現状
維持は減少し、拡大充実が増加している(図表7-5)。
② 30年を振り返ると肯定的評価が多いものの、取り組み可能な余地がある
この30年を振り返るなかで、行政の施策等でボランタリー活動団体の活動に影響を及ぼしたものは「助成金」(47.1%)が最も多く、前回調査に比べて増加
が見られる(図表10-3)。
また、30年間の評価については、「ボランタリー活動に対する一般的な認知・理解が高まった」や「ボランタリー活動が社会の中で一定の役割を果たすよう
になった」について、「思う」(「そう思う」と「ややそう思う」の計。以下同様。)と回答した団体が6割を超えており、「思わない」(「そう思わない」
と「ややそう思わない」の計。)(1割未満)と回答した団体を大きく上回るなど、活動に対する地域の認知・理解や役割についての高まりへの実感が見られた。
一方、肯定的な意見の方が多いものの、他の項目と比べ、相対的に低くなる項目は、「ボランタリー活動に対する社会制度や支援制度が充実した」、「ボラン
タリー活動に対する学校教育での取り組みが活発になった」、「ボランタリー活動に対する企業の社会貢献活動が活発になった」で「思う」よりも「どちらとも
いえない」が高い結果となり、ボランタリー活動を推進する社会的な取り組みや支える面では、まだ取り組み可能な余地が大きいと見られる。
以下のファイルは、報告書を分割して掲載しています。