詳細資料_県民ボランタリー活動実態調査

詳細資料_県民ボランタリー活動実態調査

県民ボランタリー活動実態調査(平成26年度)

内容

1 調査趣旨

「ボランティア元年」と言われた阪神・淡路大震災から20年を迎えるにあたり、県民ボランタリー活動を行っている団体やグループの実態や課題、ニーズ等を把握し、これまでの兵庫のボランタリー活動の取り組みを評価し、今後の活動の支援方策を検討するための基礎資料とすることにより、県民ボランタリー活動を促進する。

2 調査方法

県内NPO法人及び市区町社会福祉協議会への登録団体から無作為抽出した5,000団体に調査票を郵送し、調査(平成26年7月調査)。

3 有効回答 2,642団体(有効回答率:52.8%)

*任意団体:2,180、NPO:436、一般社団法人等:26

4 調査委員会の設置

調査内容の検討や結果の分析を行うため、NPO関係者、学識経験者等で構成する調査委員会を設置した

委員長:宮垣 元 慶應義塾大学総合政策学部 教授
委員:山口 一史 (特)ひょうご・まち・くらし研究所 常務理事
委員:江見 淳  生活協同組合コープこうべ 地域活動推進部 統括部長
委員:松村 吉隆 (社福)神戸市社会福祉協議会 広報交流部 広報交流課長

5 調査結果の概要

(1) ボランタリー活動の定着と広がり

多くの団体が「ボランタリー活動に対する理解や認知が高まるとともに、参画と協働が進んだ」と考えている。

ア 阪神・淡路大震災の20年を振り返り、兵庫のボランタリー活動は評価されている。
 ・一般的な認知度が高まった 思う:74.7% 思わない:2.6%
 ・社会の中の役割が高まった 思う:75.7% 思わない:1.9%
 ・ネットワークが広がった 思う:50.8% 思わない:7.2%
 ・社会制度・支援制度が充実した 思う:49.9% 思わない:7.7%
 ・参画と協働が進んだ 思う:52.0% 思わない:6.7%

イ ボランタリー活動の種類やニーズ、活動量は拡大している(「増加」が「減少」を上回っている)が、担い手等は伸び悩んでいる。
【5年前との比較】 活動の種類、利用者数等で。
 ・活動の種類 「増えた団体」:42.8% 「減った団体」:14.9%
 ・利用者数 「増えた団体」:34.1% 「減った団体」:24.9%
 ・支出総額 「増えた団体」:28.4% 「減った団体」:19.2%

法人格別では、「NPO法人」、発足年別では、「2005年~2009年」、分野別では、「子どもの健全育成」「文化・スポーツ」「まちづくり」、活動の中心年齢層では「35歳以上49歳以下」の活動が活発であった。
逆に、「減少」が「増加」を上回ったのは、活動者数、寄付金収入で、活動の役割やニーズ、活動量は拡大する一方で、それを皆で担う力が追いついていない状況。

ウ 今後の活動の方向性は、拡大・充実志向が増えている。
【前回(平成21年度)調査と比較】
 ・拡大、充実する 32.0%(前回)  → 37.9%(今回)
 ・現状を維持する 64.4%(前回)  → 56.5%(今回)
特にNPO法人、新しい団体、支出総額が多い団体は、拡充傾向にある。

エ 63.2%の団体が、他団体と連携・協働している。
他団体と連携・協働は、支出総額が大きいほど割合が高い傾向にある。具体的な相手先は全体としては「自治会」が最も多いが、特徴的なこととして任意団体では「老人会」が多く、NPO法人では「企業」「小売店」等が相対的に多くなっている。
また、「情報交換や交流会を開催」が57.6%(前回63.4%)である一方、「サービスを補完」が14.0%(前回9.9%)や「お互いの活動の支援やスタッフの受け入れ」が32.2%など、連携内容が具体化している。

(2)ボランタリー活動の多様化と二極化

活動分野や範囲に広がりが見られ、多様性が高まっている。そして、NPO法人と任意団体、担い手が若年層の団体と高齢層の団体、設立年の新しい団体と古い団体などでは、活動に差が生じてきている。

ア 県内のボランタリー活動は、多様化している。
「福祉・保健・医療」分野の割合が高い(任意団体63.6%、NPO法人48.7%)が、新しい団体ほど、「子どもの健全育成」「まちづくり」などの割合が高くなっている。活動範囲も、30.7%が一つの市区町内を越えた広域で活動しており、活動の分野、範囲に広がりが見られる。

イ ボランタリー活動の担い手や事業規模は、法人格による違いが見られる。
活動の中心層について、77.0%が「女性中心」で「高齢化」とともに大きな変化は見られないが、NPO法人では「女性中心」47.6%、「男性中心」34.0%、また「49歳以下」が32.5%と男性、若年層の参加が比較的多くなっている。支出総額の過去5年間の変化では、2000年以降の設立の団体は「増加」の傾向にある。また、任意団体の92.6%が「100万円未満」に対し、NPO法人では「500万円以上」が44.2%と違いがある。

(3) ボランタリー活動における災害救援活動の展開

この10年間に発生した7つの大規模災害で25.4%の団体が救援活動を実施している。東日本大震災での支援が最も多く、17.9%が活動を行っており、そのうちの32.2%が、被災地で活動をしていた。災害直後1週間から今日に至るまで、活動をしている団体の2割から4割近くが支援を続けており、今後も20.0%の団体が支援するとしている。阪神・淡路大震災を経験した兵庫県から息の長い支援が続いている。

(4) ボランタリー活動における災害救援活動の展開

ア 課題は、活動者数の不足、世代交代の遅れである。
活動における問題点、課題としては、「活動者の数が足りない」が39.7%と最も多く、次いで「世代交代が遅れている」が38.4%、「活動に必要な資金が不足している」が24.1%、「活動者の能力向上が必要である」が23.5%となっている。
また、任意団体では、「特に問題はない」という団体が16.0%と多いが、NPO法人では、「資金不足」が47.1%と最も多くなっている。

イ 行政の施策の中では、助成金、法の制定等が助けになり、よい影響を受けた。
これまでの行政の施策で活動の助けやよい影響をうけたのは、「助成金」が56.8%で最も多く、次いで、「活動場所の提供」が24.7%と多い。
NPO法人では、「助成金」(39.0%)も多いが、「法律の制定」(NPO法(51.9%)、障害者自立(総合)支援法(18.2%)等)、「事業の委託」(17.9%)も多い。

ウ ひょうごボランタリープラザの利用については、全体の49.7%が利用している。
利用内容は、「活動資金支援」の利用が40.3%、次いで「活動場所の提供」が9.0%、「情報提供・相談」が8.3%となっている。
任意団体は、「活動資金支援」が44.1%と突出して多く、NPO法人では、「情報提供・相談」が31.3%、「活動資金支援」が17.9%、「交流会・ネットワークづくり」が12.0%となっている。
また、現在の利用状況と比較すると、すべての項目で、要望のポイントが上回っている。

6 全体を通じての分析結果(要約)

(1) ボランタリー活動の定着と広がり

  • 多くの団体が「ボランタリー活動に対する理解や認知が高まり、その役割を果たし、参画と協働が進んだ」と考えているとおり、活動が定着し充実してきた。
  • 直近5年の動向では、活動の種類、利用者数、総支出金額、事業収入について「増加」と考えている団体の方が多く、個々の活動の相乗効果が期待できる他団体との連携・協働も内容が実質化するなど、活動の量的拡大や連携による面的な広がりがみられた。
  • 行政や企業とは異なるボランタリー・セクターが着実に形成されてきたことを示すもので、県民がともに育て、分かち合う貴重な財産である。
  • 行政や企業では対応しきれない様々な社会課題に独自の発想や方法で取り組めることに加え、実際に多様な領域の団体が災害救援・復興支援活動を行ったように、災害時におけるセーフティネットとしても重要である。
  • 阪神・淡路大震災から20年、私たちはこうした活動の重要性を再確認し、担い手も、支援する側もこの歩みを止めないことが重要である。

(2) 多様性の進展と二極化

  • 今回の調査結果から、分野や範囲、活動方法に広がりがみられ、多様性は高まっていることがわかるが、あらゆる種類の団体がそうではなく、その牽引役は、主としてNPO法人で、特定の分野における比較的新しく設立された団体である。
  • その意味では、多様化というよりも、ボランタリー活動の二極化とでもいうべき状況がおこっているとも言える。
  • この二極化は、任意団体とNPO法人の違いの大きさだけでなく、担い手が高齢層の団体と若年層の団体、設立年の古い団体と新しい団体などでみられる。
  • 活動分野や地域による違いも進んでいる。たとえば、介護保険事業や支援費事業を行っている団体、行政の事業委託のある団体などの収支構造は他と異なる。全体の約半数(49.6%)の団体が10万円未満で活動を行っているのに対し、100万円以上の規模の団体も1割を超えることは、こうした事情と関連していることが考えられる。
  • 阪神・淡路大震災の被災地とそうでない地域では、その後の災害の支援活動の実施状況に違いが生じているなど、地域によって連携の構造は異なる。
  • このように多様化や二極化が見られる諸団体を「ボランタリー活動」と平均化して見ることの困難であり、支援施策は、個々のセグメントに応じた対応が必要となる。

(3) 自発的な参加の動向

  • 重要なことは、活動の量的拡大や多様性の広がりの一方で、そのリソースが乏しくなっていると考えられる点である。
  • 活動の種類や利用者、総支出金額、連携数などが増加している一方、活動者数と寄附金についてはむしろ「減少した」とする団体の方が上回っていた結果は、自発的参加の減少と捉えることができる。
  • 社会的なニーズや役割が高まる一方で、新しい担い手や寄附金が増えないために、限られた人たちが限られた資源の中で頑張って活動を行っているという構造が浮かび上がる。
  • この20年間で、たしかにボランタリー活動への期待は高まり、様々な場面でその役割を果たそうとする団体が増え、ボランタリー活動は広がったが、それを担い、支える力が弱まっているとすれば、問題である。
  • 兵庫県のボランタリー活動はこの20年間で大きく花開き、私たちもその価値を享受している。その樹は今後も枯らさず、さらに花開かせるためには、その土壌に栄養を送り続けなければならない。
  • そもそも、ボランタリー活動は「誰かがやってくれること」ではなく、私たち皆が担い分かち合うことで初めて成立する。ボランタリー活動は、自発的な参加により担われ、支えられているのである。
  • 若年層や現役世代など、従来ボランタリー活動には関わりの乏しかった層へのアプローチは急務であり、直接的な活動経験の有無にかかわらず、そもそも「自分たちの社会・地域」という意識を広く醸成していく必要がある。

関連資料



トップに戻る